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離婚協議書と離婚給付等契約公正証書
離婚の契約書には二つのタイプがあり、次のどちらかです。
・離婚協議書
・離婚給付等契約公正証書
契約書のタイトルは、契約書の内容等によって上記と違うこともあると思いますが、このページで説明する事項を複数含むような契約には、通常、上記のタイトルを付けます。
離婚協議書とは、別れようとしている夫婦が協議し、二人が合意した内容を自分たちで文書にして、双方が署名押印した契約書です。文書化するに当たって、行政書士の手を借りたとしても、私人である当事者が二人で作った書類ですから、これは私文書です。
これに対して、離婚給付等契約公正証書は、公証人(特別の資格を持った公務員)が作成しますので、公文書です。離婚の契約を公正証書という公文書にするには、次のような手順を踏みます。
1.当事者同士が話し合って、公正証書にしてもらいたい事項を整理して合意する。
2.当事者二人が、公証役場へ出向き、合意した内容を公証人に話す。
3.公証人は、当事者から聴取した内容を文書に落とし込む。
4.文書が完成したら、当事者二人共が公証役場に集合し、公証人が、作成した文書を二人に読み聞かせる。
5.二人がその内容に同意を表明し署名押印して完成。
公正証書は公文書ですから、当事者以外の第三者に対する信用力が高まり、契約内容に強制執行力を付与することもできます。
離婚協議書は、上記1を文書にして、当事者双方が署名押印しただけのものですから、その内容は、公正証書の原稿に等しいともいえます。
離婚の契約は公正証書にすることをお勧めします
公正証書を作成せず、離婚協議書だけで十分という考え方も、もちろんあります。公正証書にするには、手間も時間も費用もかかります。離婚するとはいえ、少なくとも相手は約束を守る人だと互いに信じられるなら、離婚協議書だけ作れば十分で、公正証書は不要かもしれません。
しかし、離婚という事柄の性質上、常に対立の可能性を含んでいるので、今は信頼できると思っても、公正証書化しておいた方が、安心だと思います。
離婚時には想定していなかった事態、例えば、失業や再婚によって、離婚協議書の合意を守ることが難しくなったり、守る気が無くなったりする可能性はゼロとは言えないからです。
離婚協議書、離婚給付等契約公正証書を作る前に
夫婦間で離婚条件について完全に合意していることが必要です。公正証書にする場合ももちろん同じで、公証人が双方の隔たった意見を仲介して合意に導いてくれるわけではありません。
二人で話し合っただけでは、なかなか合意に達しないなら、ニュートラルな立場の共通の友人に話し合いに入ってもらい仲裁してもらえれば、それに越したことはありません。また、養育費や別居中の婚姻費用については、東京家庭裁判所ウェブサイトに「養育費・婚姻費用の算定表」(早見表)が掲載されているので、それを参考にすることができます。
しかし、そのような理想的な共通の友人を持つ夫婦はあまりいないと思われ、その場合は、家庭裁判所に調停をお願いすべきです。家裁の調停は、裁判官一人と調停委員二人により行われます。調停は家庭裁判所で行われますが、上述のニュートラルな友人の役割を裁判官一人と調停委員二人がチームで担ってくれるもので、白黒を決めるのではなく、調停チームが双方の言い分を聞いて、こうした方がいいんじゃないですか、と双方に歩み寄りを提案してくれるものです。
残念ながら、調停でも条件に合意できなければ、双方がそれぞれ弁護士を雇い、裁判所に訴え、公開の法廷で対決して、白黒の決着をつけざるを得ません。
離婚協議書、離婚給付等契約公正証書に記載すべき事項
順序として通常、離婚協議書あるいは離婚給付等契約公正証書を作成した後に、離婚届を出します。ですから、離婚協議書あるいは離婚給付等契約公正証書の第1条には、どちらが届出に行くか、いつ行くかについて具体的に記載します。
また、離婚給付等の「給付」とは、離婚原因を作った配偶者(以下、甲という)からもう一方の配偶者(以下、乙という)へお金や財産(不動産など)を渡す(給付する)ことを主に意味します。具体的には、慰謝料、養育費、財産分与を指します。
その反対に、子を引き取って養育している乙が、甲に子との面会交流の機会を与えることも「給付」です。
財産的な給付は、(1) 乙への謝罪(慰謝料)、(2) 子の養育費、(3) 乙と子の今後の生活費(財産分与)に分類できますが、それぞれの事情によって、例えば、(3) に(1) を含めて金額を取り決めるようなことも可能です。
ただし、例えば、慰謝料という言葉を使うことに抵抗があって、代わりに和解金とか解決金という言葉を使ってしまうと、その言葉が何を指すのかで後日、争いになったり、また、対象があやふやだとして、強制執行してもらえないことがありますので、文言には注意してください。
以下、協議書あるいは離婚給付等契約公正証書のメインテーマといえるいくつかの事項について、それぞれ要点を見ていきます。
慰謝料は、性質によって二つに分類できます。ひとつは、相手方の責任によって離婚せざるを得なくなり、精神的な苦痛を被ったことに対する慰謝料(離婚慰謝料)。もう一つは、不倫やDVといった行為そのもの(不法行為)に対する損害賠償としての慰謝料(離婚原因慰謝料)です。
離婚の慰謝料は精神的な被害や個別の事情による損害を、他に償う方法がないので金銭で払ってもらうわけですから、客観的な基準は本来、あり得ません。そのため、養育費のような算定表はありません。
そうはいっても、私たちと似たような夫婦が離婚したときの慰謝料は、世間では、どれくらいなのだろうと考えるのは自然です。そのような情報は、裁判例や離婚に関する専門家の書籍などに載っていることが多いですから、それらを参考にしつつ、しかしそれらの情報に流されず、飽くまでも自分たちの場合は、いくらであるべき、という考え方で決めてください。
養育費
養育費とは、子を引き取って育てる(監護する)費用であって、教育費を含みます。養育費は、子ごとに金額、始期及び終期を明確に定めなければいけません。そうしないと、強制執行できなくなってしまいます。
養育費は、一括払いではなく、定期払い(毎月払い)が望ましいと、裁判所は考えています。もちろん、ケース・バイ・ケースですが、養育費は、子が成人に達するまで、あるいは大学などを卒業するまでの長い間に、事情の変更による金額の増減が往々にしてあり得るからです。
養育費に影響を与えかねない事情変更としては、父母の再婚や失業、収入の大幅な減少、子の長期入院などが想定できます。再婚については、養育親が再婚しても、再婚相手が子に対して自動的に扶養義務を負担することにはならないので、注意してください。再婚相手に扶養義務を負担させるには、養子縁組が必要です。
また、養育費不請求の合意は、その効力に疑問があります。そもそも養育費は親のものではなく、子のものなのですから、別れようとしている夫婦の間で、払わない、もらわないと決めてよい問題なのかどうか。もっとも、子を引き取る側が余程裕福であるなど、これも個々の事情によります。
親権
親権とは、子を育て、住む場所を決め、教育し、学校に通わせ、進路を決め、子の財産(例えば、おじいちゃんが孫に遺贈した100万円)を管理することです。
今日の晩御飯を食べさせるのも親権の行使ですし、進路について子から相談を受けたときに、アドバイスを与えてその子の進路の決定に影響を与えるのも親権の行使です。
婚姻中は、父母の両方が親権者です。そして、離婚した場合、今までは、父か母のどちらかだけが親権者になりました。
ところが、令和8年4月1日に民法が改正され、離婚後も(事実婚が破綻した場合も)父母が共に親権者になることが可能になります。これを共同親権といいます。
共同親権は、令和8年(2026年)4月1日以降に離婚しようとする、子のある夫婦にとって非常に大きなインパクトを与えると考えられます。
親権は次の三つに分類できます。すなわち、(1) 日常の行為(上述の晩御飯など)、(2) 共同して親権を行うべき特定の事項(上述の進路決定など)、(3) 子の利益のため急迫の事情があるときの決定(交通事故にあって緊急手術が必要など)、です。離婚した夫婦が共同親権を選択した場合、(1) は単独で行使でき、(3) も相談している時間がなければ単独で行使できますが、(2) は共同で(つまり相談して合意したうえで)親権を行使しなければなりません。 共同親権については、施行後間もないため、個々の具体的な事例において、条文の解釈が分かれるようなケースも出てくると思いますので、専門家の意見を注意して聞いてください。
子との面会交流
面会や交流は、子の利益を最も優先して考慮しなければなりません。
会っている時間が長過ぎる、どうして運動会の日付を教えてくれなかったの、勝手にものを買い与えないで、わたしに黙ってLINEしないで等々、面会や交流に関連した諍いは絶えません。そんな時は、どうか民法に書いてある「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」ということを思い出してください。
上述のような諍いを避けるため、面会交流の内容を具体的に、離婚協議書あるいは離婚給付等契約公正証書の中で規定することは可能です。例えば、毎月第3日曜日の午前9時に、どこそこで引渡し、午後7時にどこそこで返す、などです。しかし、これもあまり詳細に決めてしまうと、その日曜日に子が病気になったときはどうする、などと切りがなくなってしまいます。そのため、家庭裁判所の見解も、できるだけ、包括的、一般的な決め方がよいとしています。
清算条項
清算条項とは、この離婚協議書あるいは離婚給付等契約公正証書に書かれている債権債務(お金を請求する権利、それに対して支払わなければならない義務)以外の債権債務は存在しないことに合意します、という条項です。この条項を入れることによって、後日、思わぬときに、あれを払ってもらうのを忘れていたから払って、などと言われることが無いようにします。
ですから、清算条項を入れてお互いに安心するためには、不動産や高価な動産、預貯金、保険、年金など財産分与の対象になり得る全ての財産を、お互いに正直に開示して給付条項を決めてください。ダイヤの指輪を隠していて発覚した場合、清算条項を結んでいたとしても、隠した方に過失や悪意があれば、その宝石について清算条項は、当然無効になります。
また、養育費に関しては、清算条項があったとしても、その対象とならず、後日の事情変更により増減されることがあります。養育費は別れた夫婦間の問題というより、子の生活の問題だからです。
また、子本人にも扶養料請求権がある(法定代理人によって請求する)ことに留意しておいてください。
離婚給付等契約公正証書作成の手続
公正証書作成には、冒頭の章、離婚協議書と離婚給付等契約公正証書で解説したとおり、原則として、当事者(別れようとする夫婦)二人が一緒に公証役場に少なくとも2回出向く必要があります。最初は合意事項を二人で公証人に説明するために出向き、次に、公正証書が完成したら、再び二人で公証役場に出向き、二人の面前で公証人が読み聞かせる公正証書の内容に同意し署名押印します。
しかし、出来れば顔を合わせたくない、あるいは当事者の一方が遠方に引っ越したという場合には、委任状をもらうことによって、当事者の一方を行政書士が代理することが可能です。
当事務所も、公正証書作成手続きにおいて、首都圏に限りますが、一方の当事者の代理人になることが出来ますので、そのようなご要望がありましたら、お問い合わせからご連絡ください。あるいは、直接お電話をください。
離婚給付等契約公正証書の費用
公証費用(公証役場で公証人に離婚給付等契約公正証書を作成してもらう費用)は、公正証書に記載する各給付の額によって変わります。
つまり、慰謝料や財産分与の金額が大きければ、おおきいほど、公証費用も高くなるということで、有り態にいえば、税金と同じく、お金持ちには、よりたくさん払ってもらいます、ということです。
その他の主な令和8年4月1日施行の民法改正点
令和8年4月1日施行の民法改正では、共同親権(第819条)だけではなく、主につぎのような事項も改正されています。
・財産分与に関して、婚姻中の財産形勢過程における寄与度の指標を明確化し原則1/2ずつとする。民法第768条
・財産分与を請求できる期間が、2年から5年に伸長。民法第768条
・公正証書(債務名義)無しでも強制執行(差押え)が可能になる。(養育費債権に先取特権を付与)民法第306条、第308条の2
・離婚協議書による取決めがなくても、法定養育費2万円/月/人を請求でき、払わなければ差し押さえることもできる。民法第766条の3
・父母以外の親族と子の交流について規定新設。民法第766条の2